こんにちは。
ジェイアイシー九州の高野・徳留です。
日々、障害のある方々のご家族や福祉に関わる皆様にお役立ていただける内容をテーマに情報をお伝えしております。
前回は「成年後見制度」についてご案内させていただきました。
今回のテーマは「民事信託(家族信託)」です。
◇残されたお子様のためにできること…
もし親御さんに万が一のことがあったとき、障がいのあるお子様の生活費などの経済的サポートはどうすればいいでしょうか…?
親御さんが認知症になって判断能力が不十分になった場合や事故で亡くなった場合、銀行の口座は凍結されてしまい、障がいのあるお子様のために財産を自由に扱うことができなくなってしまいます。
また親御さんが突然亡くなってしまった後、障がいのあるお子様の生活をサポートしてくれる人が定まらず、家族間トラブルとなってしまう心配もあります。
そこで、お子様を支援していく方法のひとつとして、前回のテーマの「成年後見制度」についてお話させていただきました。
こちらは皆様もよく聞かれる制度ではないでしょうか。
成年後見制度を利用すると安心ですが、その反面、ちょっとしたことでお金を使いたいときに簡単に預金を引き出せなくて困った…、などのお話をお聞きすることがあります。
(⇒「成年後見制度」については前回コラムをご参考ください)
そこで、将来の備えのためにスタートしやすい制度の一つとして、「民事信託(家族信託)」をご紹介させていただきます。
◇信託とは…?
「自分の大切な財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大事な人や自分のために運用・管理してもらう」制度です。言葉の通り、自分の財産の管理を人に任せることです。
財産の管理・運用として、「ためる・ふやす(資産運用)」「まもる(資産管理)」「つなぐ・ゆずる(資産承継・相続)」などがあります。
(資産とは…現金や貯金・不動産・ダイヤモンドや高額な美術品など、金額で評価ができるプラスの財産のこと。)
◇信託の大まかな種類
信託には、大きく分けて「商事信託」と「民事信託(家族信託)」があります。
商事信託… 信託銀行や信託会社と信託契約をすることを言います。(例として生命保険信託など)政府の許可を得た信託銀行や信託会社に財産を託し、管理運用を任せるものです。信託会社への運用手数料や報酬の支払いなど、費用負担が発生します。
民事信託… 人と人とが信託契約をすることを言い、ほとんどが家族間で行われるため、「家族信託(=民事信託)」と呼ばれています。民事信託(家族信託)の場合は、営利目的として行わない・免許が不要・報酬無しで財産を管理運用します。家族間で契約を行いますので、手数料や管理費がかからないため、費用負担を抑えることができます。
~以下、民事信託は家族信託に置き換えてお話します~
◇では実際に、「家族信託(=民事信託)」はどのように行うものなのか?
家族信託の手続きとして、目的や財産を確認し、委託者・受託者・受益者の3つの役割を決め、信託契約書を作成します。
例えば、父・姉・障がいのある弟の3人家族で家族信託を行う場合…、3つの役割を下記のように設定します。
父 | → | 委託者 | 財産を託す人 |
姉 | → | 受託者 | 財産を託される人 |
障がいのある弟 | → | 受益者 | 財産の管理・運用で利益を得る人 |
このように設定することで、親がお子様の経済的なサポートができなくなったときでも、受託者が親に代わって財産管理を行うことができるので、受益者となる障がいのあるお子様は生活費など必要なお金を滞りなく受け取ることができます。
◇親が亡くなってしまった後の相続は…?
冒頭でもお伝えしましたが、親御さんが亡くなったあとによくあるのが「障がいのあるお子様の経済的サポートを誰がするのか?」についての家族間トラブルです。
家族信託では、親がなくなってしまった後の相続についても決めることができます。
家族信託を利用すれば、親や兄弟が亡くなった後のサポートをしてくれる次の受託者をあらかじめ指定しておくことができますので、前もってトラブルになることを避けることができます。
また、親が亡くなった後に財産を相続する人に加え、さらにその人が亡くなった際の相続する人も指定することができます。
障がいのあるお子様がなくなってしまい、そのお子様の財産を引き継ぐ法定相続人がいない場合でも、他の親族(いとこ等)に相続するよう決めることもできます。(遺言・二段階相続)
このように民事信託を活用すれば、親がなくなった後や任せていた兄弟が亡くなった後、障がいのあるお子様ご自身が亡くなってしまった後でも、将来の相続をどうしていくかを親が生きている間に決めることができます。
先々まで見据えて準備することができますので、残されたご家族も安心ですね。
◇費用について
ご参考までに費用について紹介させていただきます。家族信託を始める場合、初期費用がかかります。具体的には、信託契約書の設計や、公正証書の作成、不動産がある場合には名義変更にかかる登録免許税など合計で50万円〜100万円程です。その後は、家族でのやり取りになりますので、毎月の報酬など手数料のようなものは発生しません。
成年後見制度だと、初期費用(申立て費用)に10万円程、後見人への報酬として月額2~6万円の費用が発生します。
月々2万円だったとしても10年間で考えると240万円程の費用が必要になってきます。長い期間で考えると意外と費用がかかってしまいますね…。
初期費用 | 継続的な費用 | |
家族信託 | 50万円~100万円 | 特になし |
成年後見制度 | 10万円程 | 月額2万円~6万円 |
◇終わりに…
さて、ここまで「民事信託(家族信託)」についてお話しさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
将来に向けてご活用いただける制度の一つとしてご紹介させていただきました。
成年後見人制度を利用する程ではないけれど、お子様の将来のためにそろそろ家族と相談しておきたい…、そんなお悩みのある皆様のご参考になればと思います。
今後も皆様のお役に立てるような情報を発信してまいります。
私どもジェイアイシー九州では、【知的障がい児者・自閉症児者のための生活サポート総合補償制度】にて、お子様ご自身のケガや病気・賠償事故に備えられる充実した補償をご用意しております。
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